他人よりも自分の方が優れていると誤認すること。七慢・八慢・九慢に分類される。
【七慢】『阿毘達磨品類足論』巻1などに説かれる。①慢は、劣れる他人に自分が優れていると思い、等しい他人に等しいと思うこと。②過慢は、他人に等しいのに自分が優れていると思い、他人が優れているのに自分と等しいと思うこと。③慢過慢は、他人が優れているのに、自分がさらに優れていると思うこと。④我慢は、我をたのんで思いあがること。⑤増上慢は、法理などをいまだ得ていないのに得たと思うこと。⑥卑慢は、他人のほうがはるかに優れているのに自分は少ししか劣っていないとすること。⑦邪慢は、自分は徳がないのに徳があるようにみせること。
【八慢】『成実論』巻10に説かれる。①慢は、他人より劣っているのに自分の方が優れていると思い高ぶること。②大慢は、対等の立場にありながら、自分の方が優れていると思い高ぶること。③慢慢は、自分が他人よりも優れていることを鼻にかけて相手を見下すこと。④我慢は、五陰が和合した身体を真の我であるとみること。⑤増上慢は、まだ覚りを得ていないのに得たとしていつわり高ぶること。⑥不如慢は、他人が自分より多分に優れているのに、その差はわずかであると思い高ぶること。⑦邪慢は、実際には自分に徳がないのにあると思い高ぶること。⑧傲慢は、善人や優れた人に対して礼をなさず尊敬しないこと。
【九慢】『俱舎論』巻19に説かれる。①我勝慢類とは、我と等しい者の中で、我が優れていると思うこと。②我等慢類とは、我より優れているものに対して我に等しいと思うこと。③我劣慢類とは、我より多分に優れているものに対し、自分は少し劣ると思うこと。④有勝我慢類とは、実際に他は我より優れているのに、謙遜を装って他は我より優れていると思うこと。⑤有等我慢類とは、他は我に等しいと思うこと。⑥有劣我慢類とは、等しいのに、他は我より劣ると思うこと。⑦無勝我慢類とは、他は我より優れることはないと思うこと。⑧無等我慢類とは、他が我に等しいことはないと思うこと。⑨無劣我慢類とは、実際には他は我より優れているのに、謙遜を装って他が我よりも劣ることはないと思うこと。▷増上慢