❶心身を逼迫して悩ますもの。楽に対する語。煩悩によって引き起こされる悪い行い(悪業)の結果として受ける望ましくない報いとされる。
①二苦。老・病・死など自己の心身から起こる苦(依内苦)と外部から受ける苦(依外苦)の二つ。外苦には、悪人・獣(有情)などによる害苦と、風雨寒熱など自然(非情)による災害の2種がある。
②三苦。風水害・天災など好ましくない対象から感じる苦(苦苦)、好ましい対象が壊れるとき感じる苦(壊苦)、森羅万象が無常に移り変わることから感ずる苦(行苦)の三つ。これとは別に、涅槃経では、苦の程度によって上苦・中苦・下苦の三苦を挙げる。
③四苦。生苦・老苦・病苦・死苦の四つ。生きとし生けるものが逃れることができない根源的な苦。
④八苦。生老病死の四苦に加えて、愛別離苦(愛するものと別れる苦)、怨憎会苦(憎むものと会う苦)、求不得苦(求めて得られぬ苦)、五盛陰苦(五陰盛苦ともいい、心身を形成する五陰の不調和による苦)を合わせた八苦。生老病死を一つにし、あとの四苦を加えて五苦とする場合もある。
⑤十苦。宝積経に説く10種の人の苦。生苦・老苦・病苦・死苦・愁苦・怨恨・苦受(三受の一つ)・憂苦・病悩苦・流転大苦の十苦。
❷四諦の一つの苦諦のこと。あらゆるものには固定的な実体がなく常に移り変わるものであることを知らず、それに執着すると、すべてのものごとが苦である(一切皆苦)という真理のこと。