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六師外道(ろくしげどう)

釈尊存命中にガンジス川中流域のインド中心部で勢力のあった、6人の仏教以外の思想の指導者のこと。六師は既成のバラモンの権威を否定して自由な思想を展開し、新興の王侯貴族・商人たちの支持と援助を受けた。それぞれが独自の主張をもち、当時の社会で新しい思想の代表とみなされていた。
①富蘭那迦葉[ふらんなかしょう](プーラナカッサパ)。不生不滅を説き、人間はたとえ何を行っても悪にも善にもならないといい、業と応報の因果を否定する無道徳論者。
②末伽梨拘舎梨子[まがりくしゃりし](マッカリゴーサーラ)。邪命外道を率いた外道。一切は無因無縁で、すべてはあるがごとくにあり、なるがごとくになると唱え、人間の意志による解脱は不可能であるとして、地水火風空および霊魂などの要素を認める無因論、自然主義的宿命論者。
③珊闍耶毘羅胝子[さんじゃやびらていし](サンジャヤベーラッティプッタ)。人知に普遍妥当性を認めず、世に不変の真理はないとし、一方的断定は論争を生じ、解脱の妨げになるという判断中止の思想を主張し、実践修行によって解脱を得ようとした懐疑論者。
④阿耆多翅舎欽婆羅[あぎたししゃきんばら](アジタケーサカンバラ)。断滅論を説き、物心二元ともに断滅に帰し、人間は死ぬと無に帰す。したがって過去も未来もなく、善悪の業の果報も受けることがないとして、現世の快楽説と唯物説を主張した感覚論者。順世外道の祖とされる。
⑤迦羅鳩駄迦旃延[からくだかせんねん](パクダカッチャーヤナ)。地水火風の四元素と苦・楽・霊魂とが人間構成の七集合要素であるとみなす唯物論的七要素説者。各要素は常住不動で相互に影響作用しないとして、例えば剣で人を切っても生命を奪うことはできない、ただ剣が七要素の間隙を通過するだけであるなどと説く。無因論的感覚論者。
⑥尼乾陀若提子[にけんだにゃくだいし](ニガンタナータプッタ)。ジャイナ教の祖。世界・霊魂の相対的常住を認める蓋然説をとり、苦行によって霊魂が物質から分離するとし、これを解脱と呼んでいる苦行論者で、苦行外道という。