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良医病子の譬え(ろういびょうしのたとえ)

法華経如来寿量品第16に説かれる譬え(法華経484㌻以下)。智慧があり聡明で医薬に通じた良医には、大勢の子どもがいた。良医が他国に行って留守の間に、子どもたちは毒薬を飲んでしまい、地に転げ回って苦しんでいた。そこに父の良医が帰ってきて、直ちに良薬を調合して与えた。子どもたちのうち、本心を失っていない者は飲んですぐに治ったが、毒気が深く入り込んで本心を失った者は、良薬を見ても疑って飲もうとしなかった。そこで良医は方便を設けて「是の好き良薬を、今留めて此に在く。汝は取って服す可し」(法華経487㌻)と言い残して他国に行き、使者を遣わして「父は死んだ」と伝えさせた。本心を失っていた子どもたちは、父の死を聞いて嘆き悲しみ、本心を取り戻し、ついに良薬を飲んで病気を治すことができた。子どもたちがみな治ったことを聞き、父は喜んで帰ってきたという。釈尊はこの譬えを通し、良医の虚妄の罪を誰も責めないだろうとし、自分は娑婆世界常住する久遠実成の仏であるが、方便によって涅槃に入る姿を見せて、衆生に求道心を起こさせると説いている。