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(こう)

計りがたい長遠な時間の単位。サンスクリットのカルパを音写した劫波などの略。大時などと訳す。その長さを示すのに種々の説がある。天人が4000里四方の石山を100年ごとに細かくやわらかい衣で拭いて、石山を磨耗し尽くしても劫は尽きない(払石劫の譬え)、また4000里四方の大城を芥子(カラシナの種)で満たし、100年に1度、1粒を取って、取り尽くしてもなお劫は尽きない(芥子劫の譬え)などと説かれている。そのほか、大千世界の草木をことごとく1寸に切って籌[ちゅう](数を算えるための木製の串)とし、100年に1籌をとって、これを全部取り尽くしたときを1劫とする草木劫、ガンジス川の広さ40里の中に細かい砂を埋め尽くし、100年に1度、1粒を取り出し、これを取り尽くしたときを1劫とする沙細劫、大千世界を砕いて微塵とし、100年に1度、1塵を取ってこれを取り尽くしたときを1劫とする砕塵劫などがある。
また世界が成立し(成)、継続(住)、破壊(壊)を経て、次の成立まで空虚の状態(空)となる、これら四つの過程を四劫といい、四劫の期間を1大劫という。成住壊空四劫はそれぞれ20中(小)劫からなるとする。
『俱舎論』によると、人寿(人間の寿命)が10歳から8万歳までの間を漸次に(後の解釈では100年に1歳)増加または減少する期間を増劫および減劫といい、1増劫と1減劫で1中劫とし、1増劫または1減劫を1小劫としている。これに対して1増1減を1小劫とする説もある。『瑜伽師地論』では住劫の20中(小)劫をすべて増減劫とするが、『俱舎論』ではそのうち最初の中劫は無量歳から10歳に下がるのみの減劫、最後の中劫は10歳から8万歳に至るのみの増劫(長さは増減劫と同じ)としている。これは住劫における人寿の増減を基準として分別したものであるが、人寿の増減のない成劫壊劫空劫のおのおのにもあてはめられる。また住劫の20中(小)劫のおのおのには小の三災穀貴・兵革・疫病)、壊劫には大の三災(火災・水災・風災)が起こるとされる。▷三災