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供養(くよう)

サンスクリットのプージャーの訳語。もともとの意味は、尊敬の気持ちで種々の行いをすること。神々や先祖の霊、また尊敬すべき人や対象に対して、食物や灯明や香や花などを供え捧げて、崇め敬う心を表すこと。
初期の仏教教団では、在家が飲食・衣服・臥具(房舎)・湯薬の四つを供養すること(四事供養)で教団を支えることが促された。仏の遺骨を納め祭る仏塔でも種々の供物が捧げられ、舞踊や音楽演奏などが行われた。また仏像が作られるようになってからは、仏像への供養も行われるようになった。法華経法師品第10では、法華経受持・読・誦・解説・書写する修行とともに、法華経に対して華・香・瓔珞・抹香・塗香・焼香・繒蓋[ぞうがい]・幢旛[どうばん]・衣服・伎楽の10種を供養すること(十種供養)が説かれている。
また故人の冥福を祈るために、種々の仏事を行う追善供養や、そのために卒塔婆を立てて供養する塔婆供養、仏像の開眼のための仏事を行う開眼供養など、さまざまな仏事が供養と呼ばれる。日本では古来からのアニミズムの影響で長年使用した針や箸などへ感謝し鎮魂を願う供養も行われている。
供養には種々の分類がある。①二種供養。財供養と法供養をいう。財供養とは飲食や香華などの財物を供養すること。法供養とは仏を敬いほめたたえ礼拝すること。
②二種供養を色供養と心供養に分けることもある。色供養とは飲食・衣服・湯薬・住居などを奉ること。心供養とは心のうえの供養をいい、心の誠を傾けて仏道を行ずること。蘇悉地経などには、真心込めて修行する心供養は、財物の供養よりもはるかに優れると説かれている。
③三種供養『十地経論』には、衣服臥具などを捧げる利養の供養、香花幡蓋などを捧げる恭敬の供養、修行信戒行を実践する行の供養の3種を立てる。
④三業供養『法華文句』には、身業供養(礼拝)、口業供養(称賛)、意業供養(相好を想念すること)をあげる。
事供養理供養『摩訶止観』では、物を惜しみむさぼる行いを破すために財物や時には身体・命までをも施す行為を事供養とし、慳貪の心そのものを破すために法を説いて施すことを理供養とする。
日蓮大聖人は、事供養として身体・命を捨てるのは過去の聖人が行うものであり、末法凡夫理供養を行うとされる。そしてこの理供養では、信心の志をもって一つしかない食物を惜しまず捧げるなどの行為が、命を捧げることに匹敵し大きな功徳善根となると教えられている(1596~1597㌻)。