リンク表示:

修羅界(しゅらかい)

修羅阿修羅)の世界。修羅の生命境涯。阿修羅はサンスクリットのアスラの音写。古代インドの神話に登場する神で、海辺あるいは海中に住むとされる。須弥山[しゅみせん]の周辺の天に住む神々の王である雷神インドラ(帝釈天[たいしゃくてん])と覇を競ったとされる。
修羅の特徴として、自分と他者を比較し、常に他者に勝ろうとする「勝他[しょうた]の念」を強くもっていることが挙げられる。他人と自分を比べて、自分が優れて他人が劣っていると思う場合は、慢心を起こして他を軽んじる。そして、他者の方が優れていると思う場合でも、他者を尊敬する心を起こすことができない。また、本当に自分よりも強いものと出会ったときには、卑屈になって諂う。自分をいかにも優れたものに見せようと虚像をつくるために、表面上は人格者や善人をよそおい謙虚なそぶりすら見せることもあるが、内面では自分より優れたものに対する妬みと悔しさに満ちている。「観心本尊抄」では「諂曲なるは修羅」(241㌻)とされ、人界所具の修羅界諂曲なさまからうかがえるとされる。「諂曲[てんごく]」とは自身の本音を隠して相手に迎合していくことである。これに基づいて仏法の生命論では、勝他の念が強く諂曲である生命状態を修羅界とする。十界のうち、地獄・餓鬼畜生三悪道修羅を加えて、四悪趣とされる。また六道の中では、地獄・餓鬼畜生三悪道に比べれば相対的にはよいので、人・天とともに三善道とされる。▷阿修羅/四悪趣/十界/帝釈天