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故亦両存(こやくりょうそん)

「故に一乗を真実とする説と一乗方便とする説の二つを併存させた」との意。「開目抄」(216㌻)では、法相宗の基(慈恩)の『法華玄賛』の文として引かれる。同抄では、法相宗一乗方便三乗真実と説きながら故亦両存とも言っていることは、「言葉の上では一乗三乗の両方を認めているが、心では天台に帰服している」(同㌻、通解)ということだと述べられている。ただし故亦両存は、源信の『一乗要決』には基の弟子、唐の鏡水栖復[きょうすいせいふく]の『法華玄賛要集』巻4の文として引かれている。日寛上人は『開目抄愚記』に「この文は鏡水所述の玄賛要集第四に出でたり。然るに彼の鏡水の文は、即ち慈恩の意を述するが故に直ちに『玄賛』というなり」(文段集169㌻)と記している。