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犢子(とくし)

サンスクリットのヴァーツィープトゥリーヤの訳。小乗20部の一つ。犢子部のこと。釈尊滅後300年ごろ説一切有部から分かれた学派。可住子弟子部などともいう。一説には、釈尊存命中に犢子外道がいて仏法に帰依し継承したので、こう呼ばれるという。その教理は諸説あるが、輪廻に不変の主体(我)を認めている点で、仏教の基本的な立場である無我説(あらゆる事物に永遠不変の固定的な実体はないとする説)に背いているので、仏法中の有我説として非難される。例えば『摩訶止観』巻10上では附仏法の外道として名前が挙げられている。日蓮大聖人「開目抄」で「犢子方広は聡明であったが、それでも大乗経小乗経の理解に誤りを犯した」(199㌻、通解)、「釈尊滅後に現れた犢子方広、後漢以後の儒教・道教の書物は、それぞれ、仏法と無関係な外道の思想や、三皇五帝による儒教の書よりも、誤った思想がさらにひどくなり、誤った教えが巧みなものになった」(219㌻、通解)と仰せである。▷方広/附仏法の外道