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小乗(しょうじょう)

乗は「乗り物」の意で、覚りに至らせる仏の智慧の教えを、衆生を乗せる乗り物に譬えたもの。もともと小乗とは、サンスクリットのヒーナヤーナの訳で「劣った乗り物」を意味し、大乗仏教の立場から部派仏教[ぶはぶっきょう](特に説一切有部[せついっさいうぶ])を批判していう言葉。自ら覚りを得ることだけに専念する声聞縁覚二乗を批判してこのように呼ばれた。部派仏教は、釈尊が亡くなった後に分派したさまざまな教団(部派)が伝えた仏教で、自身の涅槃[ねはん](二度と輪廻[りんね]しない境地)の獲得を目標とする。説一切有部は、特に北インドで最も有力だった部派で、「法」(認識を構成する要素)が実在するとする体系的な教学を構築した。これに対し、大乗仏教は自他の成仏を修行の目標とし、一切のものには固定的な本質がないとする「空[くう]」の立場をとる。中国・日本など東アジアでは、大乗の教えがもっぱら流布した。小乗は、あくまでも大乗仏教の歴史的表現なので、今日の南伝仏教の総称に用いるのは適切ではない。▷大乗