『摩訶止観』巻5のなかの一念三千の法門を明かす箇所が、開釈と結成に分けられ、両者で一念三千の展開の仕方が違っていること。開釈とは一念三千を分析的に説明する箇所であり、結成とは開釈を取りまとめて結論を示す箇所である。
開釈では、はじめに観ずる対境(対象)として、まず十界(10種の境涯、地獄・餓鬼・畜生・修羅・人・天・声聞・縁覚・菩薩・仏)を挙げ、次にその一界に三世間(十界の相違が表れる三つの次元、五陰〈衆生を構成する五つの要素〉・衆生〈個々の生命体〉・国土〈衆生が生まれ生きる環境〉)があるということを示し、最後に十如是(ものごとのありさま・本質を示す10種の観点、相・性・体・力・作・因・縁・果・報・本末究竟等)について説明しているので、この順序からいうと三千は三千如是として示されているといえる。
対して結成では、十界互具して百界になることを最初に示し、その一界に30種の世間(十如是に三世間がある)がそなわると示しているので、三千が三千世間として示されているといえる。このように論述の順に応じて三千に世間と如是の異なりがある。とはいえこれは、開と合の展開の仕方の違いによっているのであり、三千という数量と内実には変わりはない。▷一念三千