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(げ)

サンスクリットのガーターの音写の省略形。偈他[げた]、伽陀[かだ]とも書き、頌[じゅ]、諷誦[ふじゅ]と訳す。経典の中で詩句の形式を用いて、仏の徳を賛嘆したり、法理を説いたもの。
サンスクリットの文献では、音節の数や長短の組み合わせなど、構成によって多くの種類があるが、16音節(8音節を1句として、2句)2行からなるシュローカ(首盧迦)などの形が多い。
漢訳では1句の字数を4字または5字とし、4句を一偈としているものが多いが、中には2句や6句などを一偈としているものもある。これは、長行(散文)で説いたものを重ねて韻文で衆生の心に焼き付けるように説いたり、法華経提婆達多品第12で竜女が海中から出現して仏前で仏を賛嘆するなど、感情を強く表現する場合に用いられる。これを別偈という。後に転じて韻文と散文とを問わず、8字1句を4句続けた32字をもって一偈といい、これを通偈[つうげ]という。
また偈の説かれ方によって、重頌偈[じゅうじゅげ]と孤起偈[こきげ]の二つに区別される。重頌偈とは、長行(散文)で説いたものを重ねて偈頌をもって説くものをいい、サンスクリットではゲーヤといい、祇夜と音写する。これに対し孤起偈は、前に長行の教説がなく、単独に説き起こされた偈をさし、サンスクリットではガーターといい、伽陀と音写する。
「一品一偈」という場合の偈は、一品中の重頌偈または孤起偈を、長短にかかわらず一偈という。「一句一偈」という場合の偈とは、一四句偈のことをさし、涅槃経の「諸行無常・是生滅法・生滅滅已・寂滅為楽」の文などはその例である。▷十二部経