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提婆達多品(だいばだったほん)

法華経提婆達多品第12のこと(法華経396㌻以下)。提婆達多竜女成仏が説かれている。
提婆達多成仏。前半に説かれる。釈尊は、はるかな過去から常に国王と生まれ、退転なく覚りを求めてきたが、さらに王位を捨てて法を求めていた。その時、阿私仙人が「我は大乗妙法蓮華経と名づくるものを有てり。若し我に違わずは、当に為に宣説すべし」(法華経397㌻)と述べたので、王は歓喜して仙人に従い、1000年の間、仙人に身命を尽くして仕え、ついに妙法を得て成仏することができた。釈尊は、その時の王が自身であり、仙人は今の提婆達多であったことを明かし、自身が覚りを成就し人々を広く救済することができたのは、提婆達多善知識となったからだと述べている。そして釈尊は、提婆達多は未来には天王如来となるだろうと授記した。
竜女即身成仏。後半に説かれる。文殊師利菩薩は、自ら法華経を説いて教化してきた8歳の竜女(娑竭羅竜王[しゃからりゅうおう]の娘)が不退転の境地を得ており、速やかに成仏できると説いたが、智積菩薩[ちしゃくぼさつ]は歴劫修行の果てに釈尊は仏になったと述べ、信じようとしなかった。そこへ竜女が登場し、自分が成仏することはただ仏だけが証明し知られるだろうという偈を述べたが、今度は舎利弗が、女身はけがれていて法の器はなく、また五つの障りがあるとして、信じようとしなかった。そこで竜女は聴衆の前でたちまちに男子に変身して成仏妙法を説く姿を示してみせた。これを目の当たりにした智積菩薩や舎利弗、すべての聴衆は、ついに竜女成仏を信受するに至ったという。
以上の内容から、提婆達多品悪人成仏畜生成仏女人成仏を説いたものとして重じられてきた。「即身成仏」の語は、妙楽大師湛然『法華文句記』巻8でこの品を解釈して竜女成仏即身成仏と定義したことに始まっている。なお、添品法華経の序に鳩摩羅什訳の妙法蓮華経には提婆品が無かったとあり、天台大師智顗の頃から見宝塔品第11と勧持品第12(提婆品挿入後は第13)の間に提婆品が入り、現在見られるような形になったと思われる。正法華経では七宝塔品第11に含まれ、添品法華経では見宝塔品第11の後半にあり、独立した1品ではない。しかし正法華経の流布本の中には、梵志品第12として提婆品を別立しているものもある。さらに提婆品を一経として流布したものに提婆達多品経1巻、薩曇分陀利経1巻(宝塔品の一部を含む)がある。