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彼岸(ひがん)

①仏道修行によって得られる成仏の覚りの境涯を向こう岸に譬えたもの。貪・瞋・癡の三毒の苦しみに満ちたこの現実世界を意味する「此岸[しがん](こちらの岸)」に対する語。彼岸には、「到彼岸」すなわち彼岸に到る修行・実践の意義も含まれる。
大乗仏教では、成仏を目指す菩薩の修行として六波羅蜜[ろくはらみつ](布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧)を立てる。「波羅蜜」(「波羅蜜多」とも書く)とは、サンスクリットのパーラミターの音写で、「完成」「成就」を意味する。この漢訳の一つとして「到彼岸」が用いられた。
日蓮大聖人「観心本尊抄」で「未だ六波羅蜜を修行する事を得ずと雖も六波羅蜜自然に在前す」との無量義経の文を引いた上で「釈尊因行果徳の二法は妙法蓮華経の五字に具足す我等此の五字を受持すれば自然に彼の因果功徳を譲り与え給う」(246㌻)と述べられ、釈尊が得た功徳をすべてそなえた南無妙法蓮華経御本尊受持することで、釈尊が行った六波羅蜜などの成仏のための修行を実践しなくても、それらの功徳はすべて満たされることを教えられている。
②また彼岸の法要をいう。彼岸の法要は日本独自の伝統であり、一般的に春分・秋分の日を中心に前後3日の合計7日間を「彼岸」として、墓参りや彼岸会などの法要を行い、先祖に回向[えこう]する風習がある。春分・秋分の日には、太陽がほぼ真東から昇り真西に沈むが、その時季に農耕の儀礼や先祖供養が行われた。それが後に仏教と結びつき、「彼岸会」として定着していったといわれる。江戸時代には庶民にも広がって年中行事となり、墓参りなどの習慣も根付いていった。▷回向/六波羅蜜