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秘妙方便(ひみょうほうべん)

仏の真実の覚りを明かした法華経に説かれる方便。他経の方便は当座の理解のための便宜上のものであるが、法華経方便は真実に立脚しており、それ自体が成仏へと直結する働きをもつ。覚りの真実の内に位置づけられる方便なので、体内方便という。それ故、真実の体と同一の方便という意味で、同体方便ともいう。『法華文句』巻3上に説かれる。天台大師智顗は同書で法華経方便品第2の「方便」を解釈して、法用方便・能通方便秘妙方便の三方便を明かし、法華経で説かれた方便秘妙方便)と、他経で説かれた方便(法用方便・能通方便)を区別している。秘妙方便とは秘妙門とも訳す法門で、秘とは秘密の秘で、仏と仏のみが知っていること、妙とは衆生の思議しがたい甚深の境地をいう。例として衣裏珠の譬え五百弟子受記品第8)、髻中明珠の譬え安楽行品第14)、長者窮子の譬え信解品第4)を挙げている。