貪瞋癡をはじめとする煩悩など修行の妨げを停止する5種の観法。数息観[すそくかん]・不浄観・慈悲観・因縁観・界分別観または念仏観の5種をいう。この五停心観は大・小乗に通じ、凡夫・声聞の聖者・菩薩の修行に通ずる。また、この五観を修して惑障を克服した小乗教の声聞の位を五停心といい、七賢の中の三賢の第1をさす。
①数息観とは持息念ともいい、サンスクリットではアーナーパーナといい、安般などと音写する。座禅して自分の出入の息を一から十まで繰り返して数えることによって心の散乱を治する観。②不浄観とは身の不浄を観じて貪欲の心を治する観法。以上の二観は聖道に入る最初の要観とされる。③慈悲観とは慈悲を観じて嫉妬・瞋恚を治する観をいう。④因縁観とは縁起観ともいい、あらゆるものごとは縁によって生起するという縁起の法を観じて愚癡を治する観。⑤界分別観とは、界方便観・析界観・無我観・念仏観などともいい、五陰・十八界などの万物の構成要素(界)を観じて固定的実体がないことを知って執着を離れ妨げを治する観。