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縁起(えんぎ)

❶あらゆるものごとが因と縁によって生ずること。ものごとの生成に関する法理で、仏教の根幹をなす。サンスクリットのプラティーティヤサムトパーダの漢訳。生きていく中で感じる苦悩がどのように起こるかを解明し、その解消を図るもの。その大綱は、煩悩・業・苦の三道で示され、煩悩→業→苦という苦悩の生起の過程を説く。これは業感縁起と呼ばれ、四(聖)諦のうちの苦諦の内実をなす。縁起の法を知ることによって、煩悩から離れて覚りの智慧を発揮し苦悩から解放される。これは四諦のうちの滅諦に相応し、また、法身・般若・解脱という三徳の確立と整理される。仏教思想の発展に伴い、種々の縁起が説かれていった。以下、主要なものを挙げる。①十二因縁。十二(支)縁起ともいう。苦悩へと至る過程を12の項目(支)に分けて説くもの。一に無明、二に行、三に識、四に名色、五に六処、六に触、七に受、八に愛、九に取、十に有、十一に生、十二に老死である。この順に、無明から行が起こり、ついには老死という苦が起こるという過程を流転門といい、この過程を見ることを順観という。また、無明が滅すれば行が滅し、ついには老死が滅するという過程を還滅門といい、この過程を見ることを逆観という。順観・逆観の両方で、苦悩の生成消滅の因果を知り、この因果についての無知すなわち無明が、苦悩の根本原因であると覚知する。それによって、無明から離れ、結果として苦悩から解放される。部派仏教の時代には、説一切有部では、十二因縁の各支を三世に配当し、無明と行は過去の因、識と名色と六処と触と受は現在の果、愛と取と有は現在の三因、生と老死は未来の果とする。これは、三世にわたって二重の因果を説くので、三世両重の因果という。②空と縁起竜樹(ナーガールジュナ)は、縁起と空性を同一視し、空の思想を仏教の伝統法理である縁起に結びつけた。『中論』では「衆因縁生法は|我即ち是れ無なりと説く|亦是を仮名と為す|亦是中道の義なり」と述べられている。③阿頼耶識縁起唯識思想で説く縁起阿頼耶識から一切諸法(あらゆるものごと)が出現すること。略して頼耶縁起ともいう。種々の心身の行為は阿頼耶識に習気[じっけ](潜在的影響力)となって蔵され、それが諸法の種子となり現行[げんぎょう](現実にあらわれた種々の働き)を起こすとする。また発展した説では、阿頼耶識の中には一切の有漏の妄染の法と無漏の真浄の法との種子がともにあり、縁によって染法は迷いとなり、浄法は覚りとなって現れるとする。④真如縁起。ものごとを支える根本・真実の原理である真如からあらゆるものごとが生ずること。真如法性から起こるという説なので性起説ともいう。⑤如来蔵縁起衆生にそなわる如来蔵からあらゆるものごとが生ずること。⑥法界縁起華厳宗で立てられる縁起。一切のものごとが、究極の真理の表れであり、それぞれが互いに縁となり、障害なく通じ合って融和して起こっていること。▷三道/四諦❷神社縁起、寺(山)縁起、経縁起などというように、神社仏閣や経典などの起源・沿革・由来などをさす。❸吉凶の前兆。俗に縁起がよいとか、縁起をかつぐなどの迷信的なものをいう。