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天界(てんかい)

天(神々)の世界。神々の生命境涯。天はサンスクリットのデーヴァの音写で、古代インドの神話に登場する神々を意味する。前世に積んだ善根果報として、安楽な天の世界に生まれることができる。しかし、やがてその果報が尽きると、天界から離れて六道輪廻[りんね]しなければならない。そのため、天界の喜びには永続性がない。
天界は大きく三つに分かれ、欲天・色天・無色天に分かれる。
欲天は六つに分かれ、六欲天という。最下層は世界の中心にある須弥山の中腹に位置し、その四方に毘沙門天(多聞天)など四天王が住むことから、四大王衆天という。その上の第2層は須弥山の頂上に位置し、帝釈天(インドラ)を主とする神々が住み、これは三十三天と呼ばれる。これら2天は地上に神々が住むことから、地居天とされ、これより上の空居天と区別される。第3層には死者の王である夜摩(ヤマ、閻魔ともいう)が住み、夜摩天という。第4層は兜率天といい、次に地上に生まれて仏と成る者が滞在する場所とされ、娑婆世界では弥勒菩薩が待機しているとされる。第5層は楽変化天といい、神通力で欲望の世界を自らつくり楽しむ。欲天の最上に位置する第六天の王が他化自在天で、これは他者を自在に操り、第六天の魔王と呼ばれる。
色天は17あるいは18に分かれるとされ、その下層の諸層には、梵天(ブラフマー)が住む。色天の最上層は色究竟天と呼ばれる。
無色天は純粋に精神のみの世界で、空間に位置を占めることはない。体得した三昧の種類に応じた果報によって4層に分かれる。非想非非想天は、三界の頂点であり、有頂天ともいう。なお、物質的世界の頂点である色究竟天を有頂天という場合もある。
日蓮大聖人「観心本尊抄」で「喜ぶは天」(241㌻)と仰せになり、喜びに満ちていることが人界にそなわる天界を示すものとされている。これに基づいて仏法の生命論では、欲求がみたされて喜びに満ちている生命状態を天界とする。十界のうち、六道の一つ。また修羅・人とともに三善道とされる。▷三界/十界