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三一権実論争(さんいちごんじつろんそう)
法華経の
一仏乗の思想の解釈をめぐって、
伝教大師最澄と
法相宗の得一との間でなされた論争。
法華経では、仏が教えを
声聞・
縁覚・菩薩の
三乗に区別して説いたことは、
衆生を導くための
方便であり、
一仏乗である
法華経こそが、
衆生を
成仏させる真実の教えであると説いている。これを
一乗真実三乗方便という。よって
天台宗では、
一仏乗を実践すればすべての
衆生が
成仏できるという立場に立つ。
伝教大師は生涯、この
一乗思想の宣揚に努めた。これに対し
法相宗は、この
一乗の教えがむしろ
方便であり、
三乗の区別を説くことこそが真実であるとした。これは
三乗真実一乗方便といわれる。すなわち、
五性各別[ごしょうかくべつ]の説に基づいて、
衆生の
機根には
五性の差別があり、その中には不定性といって、仏果や
二乗の覚りを得るか、何も覚りを得られないか決まっていない者がいると説く。そして
一乗は、このような不定性の者に対してすべての人は
成仏できると励まして仏果へと導くための
方便として説かれた教えであるとした。ここにおいて、
伝教大師と得一は真っ向から対立し、どちらの説が真実であるか、激しく論争した。これを
三一権実論争という。この論争に関する記録は得一の現存する著作の中には残っていないが、伝教の
『守護国界章』や
『法華秀句』などからその内容をうかがい知ることができる。▷
伝教大師/得一