四つの依りどころとするもの。四不依に対する語。行の四依、説の四依、人の四依、法の四依がある。行、説の四依は釈尊存命中のための四依。このうち行の四依は比丘が修行において守るべき4種のきまりであり、説の四依はインドに生まれた釈尊の四依で仏の4種の意向をいう。人、法の四依は釈尊滅後の者のための四依。このうち人の四依は、正法を護持し広めて人々から信頼され、よりどころとなる4種の導師をいい、法の四依は衆生を利益する導師が必ず順守する四依をいう。したがって末法においては人、法の四依を用いる。
❶法の四依・四不依。涅槃経巻6などに説かれる。①修行する人は仏の教えそのものを依りどころとして、教えを説く人に依ってはならない(依法不依人)。②教えの真義に従い、表面上の言葉・文章に依ってはならない(依義不依語)。③真の智慧に依って、凡人の感情・判断に依ってはならない(依智不依識)。④中道実相の義を説いた了義経に依って、そうでない不了義経に依ってはならない(依了義経不依不了義経)の四つをいう。
❷人の四依。衆生が信頼してよい4種の人のこと。涅槃経巻6などに説かれる。①具煩悩性の人(三賢の位にある声聞)②須陀洹[しゅだおん](預流)・斯陀含[しだごん](一来)の人(声聞四果の第1・第2を得た人)③阿那含(不還)の人(声聞四果の第3を得た人)④阿羅漢の人(声聞の最高位で見思惑を断じ尽くした人)の4種をいう。『法華玄義』には、菩薩の修行段階である五十二位によって四依を分けている。それによると、五品(十信以前の段階)・六根清浄(十信)を初依、十住を二依、十行・十回向を三依、十地と等覚を四依とする。章安大師灌頂の『涅槃経疏』では、義によって声聞の四依を大乗菩薩の五十二位に配して、別教および円教の菩薩の四依を立てている。
❸行の四依。修行者に対して執着のない生活を教えたもので、『四分律』などに説かれる。①糞掃衣[ふんぞうえ]を着て②常に乞食し③樹下に座り④腐爛薬(牛の尿を発酵させた薬)を用いるの四つ。
❹説の四依。仏が説かんとする4種の意趣(意向)(平等意趣・別時意趣・別義意趣・衆生意楽意趣)の意で、ふつう四意趣という。