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十地(じゅうじ)

「じっち」とも読む。仏道修行者の修行段階・境地を10種に分けたもの。地とは能生・所依の義で、その位に住してその位の法を持つことによって果を生成するものをいう。教の浅深によって、説かれる十地の内容も異なる。主なものは❶三乗共の十地大乗菩薩の十地などである。他に仏の十地声聞十地縁覚十地がある。
三乗共の十地通教十地ともいう。声聞縁覚・菩薩の三乗に共通なもので、四諦十二因縁六波羅蜜を行じ、見思惑を断じて覚りを得る境地。①乾慧地(乾慧とは法性の理水も潤し得ない乾燥した有漏の智慧で、智慧はあるが法性の空理を証得していない位。声聞の三賢位〈外凡〉、菩薩の順忍以前にあたる)②性地(わずかに法性の空理を得て見思惑を伏する位。声聞の四善根位〈内凡〉、菩薩の順忍にあたる)③八人地(人とは忍の義で、八忍地と同じ。初めて無漏智を得て見惑を断ずるという見道十五心の位。声聞須陀洹向、菩薩の無生法忍にあたる)④見地(見とは見惑を断尽して四諦の理を見る意で、見道第十六心の位。声聞須陀洹果〈初果〉、菩薩の阿鞞跋致〈不退転〉の位にあたる)⑤薄地(欲界九品の思惑のうち前の六品を断じて後の三品を残すので薄という。声聞斯陀含果〈二果〉、菩薩の阿鞞跋致以後の位にあたる)⑥離欲地(欲界九品の思惑を断じ尽くして欲界から離れる位。声聞阿那含果〈三果〉、菩薩の五神通を得た位にあたる)⑦已弁地(已作地)(三界見思惑を断じ尽くした位。声聞界の最高位である阿羅漢果〈四果〉、菩薩にとっては仏地を成就した位にあたる)⑧辟支仏地(縁覚の位。三界見思惑を断じたうえに習気を除いて空観に入る位。習気とは業の影響力のこと。見思惑そのものは断じ尽くしても、潜在的な影響力として残っていく惑をいう。『摩訶止観』巻6上には、見惑を薪に、思惑を炭に、習気を灰に譬えている)⑨菩薩地(菩薩として六波羅蜜を行ずる位。空観から仮観に出て再び三界に生じて衆生利益するので、乾慧地から離欲地までをさす。また菩薩の初発心から成道の直前までをいう)⑩仏地(菩薩の最後心で、一切の惑及び習気を断じ尽くして入寂する位。一切種智など諸仏がそなえる法〈特徴〉を具備した通教の仏の境地)。
大乗菩薩の十地。菩薩の修行段階で、五十二位の第41から第50の位。無明惑を断じて中諦の理を証得する過程である。①歓喜地(極喜地、喜地、初地ともいう。一分の中道の理を証得して心に歓喜を生ずる位)②離垢地(無垢地ともいう。衆生の煩悩の垢の中に入ってしかもそこから離れる位。破戒と慳嫉の2種の垢を離れるので離垢地という)③明地(発光地ともいう。心遅苦の無明、すなわち聞思修忘失の無明惑を断じ、智慧の光明を発する位)④焔地(焔慧地、焼然地ともいう。煩悩の薪を焼く智慧の焔が増上する位)⑤難勝地(極難勝地ともいう。断じ難い無明惑に勝つ位)⑥現前地(清浄な真如と最勝智があらわれる位)⑦遠行地(遠く世間二乗の道を出過する位)⑧不動(中道の理に安定して住して動ずることがない位)⑨善慧地(善巧の慧観によって十方一切にわたって説法教化する位)⑩法雲地(説法が雲のように無量無辺の法雨を降らし真理をもって一切を覆う位)をいう。▷五十二位