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声聞界(しょうもんかい)

声聞の世界。声聞が到達する部分的な覚りの境涯。声聞はサンスクリットのシュラーヴァカの訳で、仏の声を聞く者との意。仏の教えを聞いて、六道輪廻[ろくどうりんね]する因となる煩悩を断滅して、死後は二度と生まれて来ないことを目指す。大乗の立場からは、これを「灰身滅智[けしんめっち]」とし、成仏できないと批判した。
また四土[しど]の説では、声聞の修行の4段階(須陀洹斯陀含阿那含阿羅漢)のうち、最初の三つの声聞は煩悩を十分に断じていないので凡聖同居土に生まれるとされるが、声聞の最高位である阿羅漢縁覚のように方便の教えを修行して煩悩の一部を断じた小乗の聖者は、方便有余土に生まれるとされる。
「観心本尊抄」には「世間無常は眼前に有り豈人界二乗界無からんや」(241㌻)とあり、われわれ人界にそなわる声聞界縁覚界二乗は、無常という仏教の覚りの一分を覚知することにうかがえると示されている。これに基づき仏法の生命論では、自分と世界を客観視し、現実世界にあるものは、すべて縁によって生じ時とともに変化・消滅するという真理を自覚し、無常のものに執着する心を乗り越えていく境涯とする。▷四向四果/阿羅漢/縁覚/灰身滅智/四土/二乗