リンク表示:

(かい)

サンスクリットのシーラの訳。仏道修行者が自ら誓い課した戒め。教団の規則であるヴィナヤ(律)とは異なるが、東アジアでは同一視され、まとめて戒律といわれる。律を構成する各条項は戒と呼ばれる。戒は伝統的に「防非止悪」の意義があるとされる。仏道修行者が習得すべき戒定慧三学の一つ。『四分律行事抄』では、戒を四つ(四科)に分け、仏によって定められた戒についての教えを戒法、授戒の儀式によって心に納めて防非止悪の功徳を生ずる本体を戒体、戒を持って実践修行することを戒行、五戒十戒具足戒などの具体的な戒の規定を戒相とする。歴史上、仏教教団に属する僧尼らが権力と癒着して腐敗堕落すると、しばしば戒律復興運動が起こった。
日本では、伝教大師最澄が、具足戒小乗戒とみなして用いず、もっぱら法華円頓大乗戒を授ける戒壇の建立を目指し、死の直後に勅許された。ただし法華経には円頓戒の教理は説かれているが具体的な戒相は説かれていないので、伝教大師梵網経三聚浄戒十重禁戒四十八軽戒を用いて円頓戒の戒相としている。
日蓮大聖人は、末法無戒という立場に立たれる。伝教大師の法華円頓戒も、釈尊の教えが無益となる法滅尽の時である末法衆生にとっては無益であり不要となる。「教行証御書」には「此の法華経本門の肝心・妙法蓮華経三世の諸仏の万行万善の功徳を集めて五字と為せり、此の五字の内に豈万戒の功徳を納めざらんや、但し此の具足の妙戒は一度持って後・行者破らんとすれど破れず是を金剛宝器戒とや申しけんなんど立つ可し、三世の諸仏は此の戒を持って法身報身応身なんど何れも無始無終の仏に成らせ給ふ」(1282㌻)と述べられ、末法においては三大秘法御本尊受持することが持戒であるという受持即持戒を説かれる。
三帰五戒[さんきごかい]/十善戒[じゅうぜんかい]/八斎戒[はっさいかい]/十戒[じっかい]/具足戒[ぐそくかい]/十重禁戒[じゅうじゅうきんかい]/四十八軽戒[しじゅうはちきょうかい]/三聚浄戒[さんじゅじょうかい]