サンスクリットのカーシャパの音写。
❶摩訶迦葉のこと。釈尊の声聞の十大弟子の一人で、頭陀(欲望を制する修行)第一といわれた。釈尊の教団を支え、釈尊滅後の教団の中心となった。釈尊の言行を経典として集成したとされる。また付法蔵の第1として阿難に法を付嘱したと伝えられる。法華経授記品第6では、未来に光明如来[こうみょうにょらい]に成ると保証された(法華経256㌻)。
【鶏足山の入定】摩訶迦葉は釈尊が亡くなった後、正統な後継者となって教えを広めて、阿難にその任を譲った。それ以来、鶏足山[けいそくせん]で禅定に入って、弥勒菩薩が56億7000万年後にこの娑婆世界に仏として出現するのを待っているとされた。
【禅宗における伝承】大梵天王問仏決疑経(疑経)では、釈尊が霊鷲山で一房の花を手にとって人々に示した際、その意味を誰も理解できないなかで迦葉一人が理解してほほ笑んだとされる(拈華微笑[ねんげみしょう])。この話が、釈尊が迦葉に法を伝えたという伝説として宋以後の禅宗で重用され、教外別伝・不立文字の基盤とされた。
❷迦葉童子菩薩のこと。涅槃経巻33の迦葉菩薩品第12の対告衆。同経で迦葉菩薩は、仏はどのようにして長寿を得て金剛不壊の身になったのか、36の問いを立てて釈尊に尋ねている。爾前経の会座にも連ならず法華経の会座にも漏れ、最後に説かれる涅槃経によって利益を受けるので、捃拾(落ち穂拾い)の機根の者とされる。
❸優楼頻螺迦葉[うるびんらかしょう](ウルヴィルヴァーカーシャパ)、那提迦葉[なだいかしょう](ナディーカーシャパ)、伽耶迦葉[がやかしょう](ガヤーカーシャパ)の3兄弟のこと。火を崇拝する儀式を行う外道のバラモンだったが、成道間もない釈尊の説法を聞いて弟子となった。3人合わせて1000人の弟子を率いており、その弟子たちもともに釈尊に帰依したという。