妙法蓮華経の第7章(法華経273㌻)。正法華経の往古品第7に相当する。声聞に対して3度にわたって説いた教え(三周の説法)のうち、第3である因縁周の正説と位置づけられる。ここでは、法説・譬説の二周の説法ではまだ法華経の教えを理解していない下根の声聞のために、長遠な過去からの釈尊との因縁を説いている。
すなわち、この品の前半では、三千塵点劫という長遠な過去における大通智勝仏の出世成道、法華経の説法、入定を説き、次に十六王子が法華経を再説(覆講)して人々を教え導いたが、その第16王子が後の釈尊であり、この時に教え導かれた衆生が今の声聞たちであると説かれている。これによって、釈尊と在世の声聞との深い因縁が示され、一貫して釈尊から種熟脱の三益が施されることが明かされる。後段では、この仏の化導のあり方を、化城宝処の譬えを用いて再説し、法華経以前に説いた二乗の涅槃は化城(仮につくられた都市)のようなもので真実の涅槃ではないとし、一仏乗を信じ実践すべきことが説かれている。