リンク表示:

爾前二種の失(にぜんにしゅのとが)

法華経に対して、華厳経般若経大日経などの爾前経がもつ法門上の2種の欠点。「開目抄」(197㌻)で論じられる。①一念三千二乗作仏を説いていないこと。爾前経行布、すなわち段階的に修行して成仏を目指す修行・成仏観である。十界それぞれが別々の境涯として説かれ、相互に断絶があるだけでなく、とりわけ九界仏界との間には超えがたい断絶があるとされ、九界を断じることで初めて仏果が得られるとする。この成仏観に基づき二乗成仏を認めていない。②久遠実成を説いていないこと。爾前経では仏である釈尊の立場はあくまで始成正覚である。これは法華経如来寿量品第16に至って明かされた久遠実成という真実の境地からみれば迹(仮の姿)にすぎない。この二つのうち①は、法華経迹門では方便品第2で諸法実相十如是によって一念三千二乗作仏が明かされたので、免れることができた。しかし、迹門においては教主である仏がまだ始成正覚という迹を開いていないので一念三千二乗作仏が説かれたといっても真の一念三千ではなく、二乗作仏も確定していない。この解決は、久遠実成を明かした法華経本門によって初めてなされる。▷一念三千/二乗作仏/久遠実成/発迹顕本/本因本果