釈尊の主要な声聞の弟子である10人。経典によって誰が入るか違いがある。維摩経などの大乗経典では、声聞の弟子として小乗の教えにとらわれている弟子として描かれ、糾弾される。法華経では、順に未来成仏の記別を与えられ、二乗作仏が説かれる。
①舎利弗[しゃりほつ](シャーリプトラ)。マガダ国王舎城(ラージャグリハ)の北に生まれ、初めは六師外道のうちのサンジャヤの弟子であったが、目連とともに釈尊の弟子となり、サンジャヤの弟子250人とともに釈尊に帰依した。智慧第一と称された。法華経方便品第2の諸法実相の文によって三乗即一乗の理を理解し、譬喩品第3で華光如来[けこうにょらい]の記別を受けた。
②摩訶迦葉[まかかしょう](マハーカーシャパ)。迦葉尊者、大迦葉ともいう。マガダ国王舎城にいた尼俱盧陀長者[にくるだちょうじゃ]の子。苦行のすえに釈尊の弟子となり、乞食行に励んだので頭陀(欲望制御の修行)第一と称された。釈尊が入滅した後、阿闍世王の外護を受けて第1回仏典結集を行ったとされる。また付法蔵の第1として小乗経の弘通に努め、法を阿難に付嘱したと位置づけられる。法華経授記品第6で光明如来[こうみょうにょらい]の記別を受けている。中根の四大声聞の一人。
③阿難陀[あなんだ](アーナンダ)。阿難ともいう。歓喜などと訳す。斛飯王[こくぼんのう]の子ともされるが異説もある。釈尊の従弟にあたる。釈尊の給仕をして常に説法を聞き、多聞第一といわれる。また付法蔵の第2として小乗経の弘通に努めたとされる。法華経授学無学人記品第9で、山海慧自在通王如来[せんがいえじざいつうおうにょらい]の記別を受けている。
④須菩提[しゅぼだい](スブーティ)。舎衛城(シュラーヴァスティー)のバラモン、鳩留長者[くるちょうじゃ]の子。釈尊の弟子となって、空の法門をよく理解したので解空第一といわれた。法華経授記品第6で名相如来[みょうそうにょらい]の記別を受けた。中根の四大声聞の一人。
⑤富楼那[ふるな](プールナ)。富楼那弥多羅尼子[ふるなみたらにし]ともいう。バラモンの子として生まれた。初めは解脱を求めて山に入り苦行を積んだが、釈尊の成道を聞いて弟子となった。説法第一と称せられ、証果から涅槃に至るまで9万9000人を救済したという。法華経五百弟子受記品第8で法明如来[ほうみょうにょらい]の記別を受けた。
⑥目連[もくれん]。摩訶目犍連[まかもっけんれん](マハーマウドゥガリヤーヤナ)の略。大目犍連、目犍連とも略す。マガダ国に生まれ、初めは舎利弗と同じく六師外道のサンジャヤの弟子であったが、釈尊の教えに感銘を受けた舎利弗とともに釈尊に帰依した。神通第一といわれた。法華経授記品第6で多摩羅跋栴檀香如来[たまらばっせんだんこうにょらい]の記別を受けた。中根の四大声聞の一人。
⑦迦旃延[かせんねん](カーティヤーヤナ)。外道をよく論破したため、論議第一と称された。法華経授記品第6で閻浮那提金光如来[えんぶなだいこんこうにょらい]の記別を受けた。中根の四大声聞の一人。
⑧阿那律[あなりつ](アニルッダ)。阿〓(少に兔)楼駄[あぬるだ]などとも音写する。迦毘羅衛城(カピラヴァストゥ)の斛飯王の子。釈尊の従弟にあたる。釈尊の前で居眠りしたことを責められて不眠の誓いを立てた。そのため後に盲目となったが、禅定の修行を深く実践して天眼を得た。法華経五百弟子受記品第8で普明如来[ふみょうにょらい]の記別を受けた。
⑨優波離[うばり](ウパーリ)。優婆利などとも書く。シュードラ(古代インドの身分制度、四姓の最下層。隷属民)の出身。持律第一といわれ、第1回仏典結集の時、律を誦したとされる。
⑩羅睺羅[らごら](ラーフラ)。釈尊の子。15歳の時に出家して舎利弗について阿羅漢果を得た。よく戒を守り修行を積み、密行第一と称された。法華経授学無学人記品第9で蹈七宝華如来[とうしっぽうけにょらい]の記別を受けた。▷三周の声聞/四大声聞/付法蔵